第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「どうして、私と戦いたいの?」
何故だろう、ここからは慎重に言葉を選ばなくてはいけない気がする
デュエルに対する危険性を考えているのと、それを唐突に提案した事への驚きがあるのだろう
「リリィさん、凄く強いから…その強さを、戦って感じたいんです」
ウェンドロの語気が少しずつ強くなっている
その瞳は、何かに輝いているようにも見える
「ここ、敵が来るかも―」
「敵なんて来ませんよ」
重ねられた言葉は、完全に断言だった
確かに時折であったのは認めるが、そんなに全く襲ってこない場所であったか?
否―絶対に否だ
「大丈夫です。決着が着いたら、その時点で終わりにしますし、リリィさんの言う僕の強さが何処まで通用するのか、ちょっと試したいだけなんです」
そう言いながら彼はウィンドウを操作、私のウィンドウにメッセージが現れる
内容は『デュエルの申し込み』
残りHPが先に半分に達した方を敗者とする"初撃決着モード"らしいが、それ以上に私は思ってしまう
(そんなに戦いたいの…?)
この話になって以降、彼の言動が、何となくごり押し気味になったと感じる
私と戦う―勝つか負けるかは別として、お互い命を張る行為を、わざわざここでやる
何か、裏を感じる
(この誘い、どうする?乗る?それとも…)
ウェンドロは、瞳だけが輝いている以外は相変わらずの雰囲気を纏っている
とても、変な事をやるようには見えない
だからこそ、この不安感を元から拭おうと、私はこの挑戦状を受ける事を選択した