第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
その後、また壁―
また頭からは駄目だ
咄嗟に身体の向きを変えて頭は守ったが、身体に強大な衝撃を受けながら、また別の区画へ移っていく
これ以上引っ張られる訳にはいかない
残った力を集め、剣を握る
そのまま、首にまとわりつく髭―それに向かって、剣を刺す
瞬間、電撃―
一瞬で心臓が止まってしまいそうな、電撃が身体を駆け巡る
それでもまだ死なないのはHPが残っているからだろう
意識が無くなるのが先か、HPが無くなるのが先か、私が髭を斬るのが先か―
賭けにも近かったが、やるしかない
意識を手放さぬよう必死に繋ぎ止めながら、剣を握る
そのまま私は躊躇い無く、刺さった剣で髭を―斬った
同時にまたも電撃―だが、髭は斬れた
勢いから解放された私は地面を転がり、一人残される
身体を何とか動かして、周囲を確認する
敵は何処かへ行ったようで、姿は見えない―本当に私一人のようだ
状況を理解し、安堵の溜め息を漏らす
電撃のせいか僅かに痺れる手を動かし、ストレージを開く
求める物はポーション―所謂体力回復のアイテムだ
正直不味いのだが、今は体力回復と電撃の影響を消す事に専念しよう
口に含んだポーションはやはり不味い
しかし、今は我慢して一気に飲み干す
敵は今何処だろうか、皆は無事だろうか
相変わらず、何者かが来る気配は無い
今も、完全な一人だ
そういえば、私は今みたいに完全な一人になった事はなかった
必ず誰かがいたし、私に追い付いていた
それを考えると今はどうだ―原因は外部にあるとは言え、結果今私は物理的に一人だ
ソロプレイヤーの世界
意図せずいる状況に私は孤独を感じ始め、ただ仰向けになって天井を見るしかなかった