第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「ちょっと難しいかな」
流石のエリーもバリアのようなものを前にしては少々辛いらしい
では…どうする?
敵の高い防御能力
それを前に私達は膠着状態となった
攻撃するもしくは一定範囲に近付かなければ今の所電撃を使わない―それは分かった
だが、電撃を使われればこちらの攻撃―少なくとも遠距離は通らず、近距離では大きなダメージが予想される
リスク上等で突っ込むか、それとも―
そう考えていた矢先、突如敵が泳ぎだした
何の予備動作も無しに、急に回転―咄嗟に後ろへ跳躍したから回避出来たものの、それが遅れていれば尾びれによって飛ばされていただろう
敵は勢いを付けたまま、私へ向かって来た
意外にも速いその速度―私は左下へ滑るように回避したが、それは完全ではなかった
ナマズには髭がある
空飛ぶと言えど、電撃を放とうと、敵はナマズである
という事は髭がある
それもサイズに見合った、長い髭が
回避を選択した私に待っていたのは、唐突な逆方向への衝撃―それも首を中心に
突如詰まる息、手で首の方を触ると何かがあった
苦しい呼吸の中、僅かに見える緑の身体―敵だ
背中が地面に擦れているのが分かる
髭をほどこうともがくが、外れない
そして電撃の存在故に、外部から手が出せない
私はただ、敵に引き摺られていく
ダメージ覚悟で髭を斬るしかない
そう考えた私に待っていたのは、硬いものが頭に強烈な勢いでぶつかった
「―――!」
声にならない声、意識の半分を持っていかれる
散らばる瓦礫―敵が、壁を撃ち破って別の区画へ私ごと移動したのだと、残った意識が判断する