第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
私達がこの施設に入ってから一時間―漸くそのクエストボス"ギルダークエイク"の姿を見付けた
物陰から見える敵は、確かに巨大なナマズだ
空中をさも水中の如く飛ぶ―いや泳ぐ姿は敵とは言え、ある種の雄大さを感じさせる
「皆…準備は良いか?」
敵に動く気配が無いのを確認した部長が私達に問う
私達も心の準備は出来ている
故に、力強く頷いて答えた
「それじゃあ、スタート!!」
合図に合わせて、私達は一気に飛び出す
その瞬間に敵が私達に気付いたが―遅い
敵の胴体を斬る為に、真っ直ぐ敵へ突っ込んで行く
たったそれだけの単純な戦法
なのに直前で急に不安感が私を襲った
何かは分からない、だが直感染みたそれは私を、横に跳躍させるよう指示―私は敵から少し距離を置く形となった
直後、敵から閃光が走る
その光量に思わず顔を覆ったが、予想は大方出来ている―電撃だ
サンダーローチの時は少し痛い程度で、本当に電気ナマズかとも疑いもしたが、これは間違いない
強力な電気ナマズだ
「無事か!?」
着地後、脇からシンジ先輩の声が聞こえる
「大丈夫です!!」
敵から目を離さず、しかし聞こえるように答える
答えたは良いが、どうする?
先程の電撃は電気ナマズという見た目通り、敵から発せられている
という事は迂闊に近付けないという事だ
ならば―
「ん…お任せ」
―エリーが敵に向かって矢を放つ
それは真っ直ぐに飛んだが、敵が自身の周りにバリアだと言わんが如く電撃を放ち、矢を無効化
「………」
だが、それにも負けぬとエリーは直後に四本の矢を上向きに放った
弧を描き、敵へ向かう矢―敵はそれらをまたも、バリアのような電撃で防いだのである