第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
どういう理屈でこうなっている?
そう問いたい所であったが、そんな暇は無い
何にせよ、ボスが浮き上がった今がチャンス―
「エリィィィ!!」
拳を引いたケンタが叫ぶ
大質量に対してパンチを撃ち込んだ彼の腕は力が抜けたのか、真下を向いている
それでも、"やれ"とばかりに全力の叫びを響かせる
そして―
「ん、待ってた」
こちらは"待ってました"とばかりに答える
エリーは水平に跳躍、着地と同時に体勢を低くしながら滑り、靴底を磨り減らす
彼女はそのまま滑り、私の近く―ボスの瞳の真下で、停止した
「………」
エリーは無言で真上へ構え、珍しくブーストをかける
そして―間髪入れずに、矢を放つ
真っ直ぐ飛んだ矢はボスの瞳の中へ吸い込まれていった
矢を受け入れたボスは、瞳が徐々に充血し、真っ赤になった時―空中で、砕け散った
空間が元に戻る
(勝った…)
目の前の景色が、それを認識させ、私に安堵の溜め息を吐かせる
身体中に疲れがどっと押し寄せる―この後は良く眠れるかもしれない
ここにおいて、十五層はクリアされ、私達はまた一つ歩を進めるのであった