第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
視線を動かした先―
声の正体はケンタだった
周囲のプレイヤーが次々と膝をつく中、彼は耐えている
いや、耐えている所か彼は徐々にボスを持ち上げている
何というパワーだろうか
「ナメん…な…」
何処を見ているとも思えないボスの瞳を見つめながら、ケンタは静かに口を開く
「逆に目ぇかっ開いて…見てろぉ!!」
ケンタはそのまま、左腕だけにブーストをかけて身体を支え、下ろした右腕で拳を作ってブースト―
「これが男の…馬鹿力ぁぁぁぁ!!」
―そのまま真上へ拳を叩き込んだ
拳はボスの身体にめり込んでいく
しかし、如何にブーストしようと軟体と言って差し支えない筈のボスは、打撃に対して急速に反発を見せ始める
彼は今度は右手を支えにし、左腕を外す
そのまま拳を作り、ブースト―
「もう一撃ぃぃ!!」
全く同じ位置に拳を撃ち込む
拳は先程よりも深くめり込んで、まるでどちらかが取り込まれているように見える光景であった
同時に素早く右手を引いたケンタは、もう一度拳を作る
「これで…上がれええぇぇ!!」
そしてまた同じ箇所に拳を撃ち込む
直後、そこから上への勢いが、急速にボスに伝わり、ボスが浮き上がった
剣を私ごと弾いたボスの身体が、空中に戻ったのである