第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
柔らかい何かが反発した感覚
それが真下へ私の身体を持っていく
何が起きたか理解する前に、私の身体は地面へと叩き付けられ、肺から空気が押し出される
"引き出し"が戻り、感覚が戻る
視界が一瞬消え、元に戻った先にあるのは―瞳
威容を放ち、私を見つめ、押し潰そうとばかりに迫る
「間に合えぇぇぇ!!」
直後、私が来た方向から声―影が私を越えていく
それは一つではなく、幾つも現れて私の周り―ボスの真下へと集う
「立てるかリリィ!コイツを、持ち上げるぞ!!」
今だ叩き付けられた後の体勢の私に部長が手を差し伸べる
私はそれを確かに掴み、もう一度立ち上がる
残り時間は―僅か一秒も無い
だが、ボスを下から支え持ち上げる事で、落下を阻止している
私はもう一度"引き出し"を開け、ブーストをかけた腕でボスの持ち上げに参加する
ボスは"引き出し"にブーストをかけても重く、一人では絶対に支える事は出来ないだろう
多数のプレイヤーが支えている今ですら、余り上昇は見られない
そして最大の問題―
仮にこのボスを今より持ち上げたとして、どうやってダメージを与える?
少なくとも殴打は効かなかった
じゃあ斬撃は?―やれるか自信は無い、そして何かが違う気がする
しかし、何か突破口がある筈だ
それは…何だ?