第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
与えられた時間はあと…約七分
走ってはいるが、如何せん時間が微妙だ
だからこそ、この時間配分なのかもしれない
今だ街中にいる私達はボスを捉えられる位置まで辿り着いてはいない
この分だと、先程山があった所まで走るかもしれないと思うと厳しい
そう思っていると、突如ボスがゆっくりと回転した
単なる回転ではない―横に回った事の意味は…落下位置の変更
残り時間が15秒程、ごっそり減らされる
それにより、敵が落下スピードを速めた事を理解する
このままでは追い付けない―もし街を越えるのなら、街の端がゲート的な何かで封じられていては終わりだ
だからこそ脚力にブーストをかけ、こちらも速度を上げる
直後、左右にあるビルが引っ込んだ
スピードを落とさず走りながら驚愕する私達の前で、壁がせり上がってくる
それはまるで中途半端な半円の壁―敵が向いた右へ壁が連なっている
なるほど誘導用の道か
これならスピードを落とさずに方向転換出来る
ご丁寧に作られている道を全員で駆け抜け、ボスの落下予想位置へ急ぐ
誘導用の道は、私達に先行して次々と出来上がっており、私達はそれにそって加速する
だが…後三分―まだ届かない
街そのものが広すぎて、ボスまで遠すぎて、落下予想位置までまだ届かない
だったら―と私は走りながら一瞬目を閉じて、頭を探る
以前よりもハッキリ見付けた"引き出し"を、出せるだけ全開で―開ける
「先に、行きます!!」
直後、鋭敏になった感覚
私は周囲に聞こえるように叫んだ後、脚を全力で回した