第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
信じられない光景だ
だが、これは今しがた起きた事だ
驚愕の中、ボスのHPバーが現れる
書かれた名前は"Sahaquiel"―サハクィエル…だろうか
まるで、チュートリアルはやったから今から戦ってもらいますと言われた気分に陥る
そして―私の視界にもう一つ表示が現れる
時間のようだが…何だ?
「落下…まで…」
描かれた文字を読んだ瞬間、タイマーが動く
同時に、ボスが真下へ動き出した
どういう事だ
先にあった山の消失、落下した滴、次に落下し始めるボス、タイマー―
そこから導き出される答えは…まさか…
「走れ!!奴が落ちたら皆死ぬぞ!!」
先程与えられた要素を繋げた者がいたのであろう
誰かの叫びが響いた瞬間、参加プレイヤー全員が走り出す
やはりそうだったか、と走りながら私は感じる
あのボスは全身が爆弾みたいなもので構成されており、それを落として質量と爆発で広範囲を吹き飛ばす
そんなボスの最大攻撃は―自らを落とす事
出せる質量、爆発力は最大であり、恐らくタイマーが零となった時には、私達全員を殺すだけのエネルギーを簡単に出せるだろう
それはそれでただの自爆特攻―全員が死んでもボスも一緒に死ぬからクリアにはなる…という甘い考えは私達には無い
あの製作者、藤井水蓮氏がそんなに甘く作っているとは思えない
プレイヤーの方はともかく、敵は一度も自爆をしていない
自爆した所で、どうせ復活するだけだろう
私達に"倒せ"と言っているのだから
つまり、私達に必要な事はあのボスを時間内に倒す事
ちょっと縛りがあるだけで、やる事はいつもと変わっていない
藤井水蓮氏としてみればその程度なのだろう