第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
数日後―
あれからトンファー男に会う事もなく、ある意味平穏な状況下にいた私達に、ボス部屋発見の報が届いた
最早ボス戦に至っては、そこそこ常連と化している私達は、今回も参加する事となり、例の如くヒントに辟易するのであった
与えられたヒントは、「1」と書かれた重りを人々が支えている図であった
今回も中々に謎である
しかしながら、我々プレイヤー陣もこれまでの戦いを通して、幾つかパターンが読めてきている
全状況を表したもの、ボスの見た目や特徴を表したもの、単に名前を表したもの―様々なものがある
それでも、事実というものは戦ってみなければ分からない
だからこそ、敢えて考えずにいる者や熟考する者がおり―そんな様々なプレイヤーを抱えながら、私達はまた扉を潜るのであった
光を越えた先―視界に入る景色は、曇りの街
周囲には山があり、そのお陰か街が都市然としているのに、"囲まれた"―"天然の牢獄"感が否めない
尤も、そもそもこの世界が牢獄のようなものなのだが…
街の妙な閉塞感
それを感じながら周囲を警戒していると、突如雲が円形に割れ、その中央から巨大な影が現れた
現れた姿は暗い黄色、中央には巨大な目があり、左右に伸びたものが手のようにも見える
HPバーはまだ現れてはいない―が、敵は手の先を滴の様に垂らし、落とした
何だアレは―
落下するそれは、私達にとっては謎の物体
何が起こるか分からない
だからこそ、それを放置―その滴が私達から遠い山へ落ちていくのも、それを注目しながらも放置した理由の一つであった
滴が私達の視線を集める中、落ちて、落ちて、落ちて―落ちた
瞬間―閃光が私達を襲う
それは私達の全員が顔を覆う程の光だった
そして後に爆音―耳を塞ぐ程ではなかったが、それが爆発音の類いである事は明白であった
光が収まり、顔を覆った手を外した先に見えたものは―先程まで正面にあった山が、綺麗さっぱり消えている光景であった