第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「で、でも、皆さんのお陰で助かりました。本当に、強いんですね」
そう言って彼―ウェンドロは私達を見回す
強い―その瞬間にだけ彼の瞳に、単なる称賛とは違う光が宿ったようにも見えたが、今は気にしない事にしておく
「単にいつもこの面子でいるだけだ」
そう切り返すシンジ先輩に部長は「違いない」と言うと、しっかりとウェンドロを見据えながら続けた
「まぁ俺達はともかく、君は一人だ。またアレみたいなのに襲われるかもしれないから、今なら街まで送る事も出来るけど―」
部長の提案―ウェンドロはそれを聞いて一瞬目を丸くするが、直後彼は「いえ…」と言いながら言葉を続けた
「もう少し、この辺りで鍛えるつもりなので…すいません」
「いや、こっちも済まない。でも、死んだら元も子もない。だから十分気を付けてくれ」
そう言って私達はその場を後にし、彼―ウェンドロと別れたのであった
街へ戻りながら、私は考える
増え続けるPK、恐らくその一端を担っているであろうトンファー男―
このままPKが増え続けるのならば、いずれ彼を含めた人々を止める為に戦わなければならなくなるだろう
人と人とが戦う、か―
こんな状況にあってそんな余裕があるのか
いや、それがあるからこそデュエルというシステムがあるらしいが…
まぁ尤も私は、余程の事が無ければそんな真似はしないだろうと軽く考えて、街へ戻るのだった