第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
周りを軽く見回して、敵がいない事を確認―終わった事に安堵の溜め息を吐きながら、剣を鞘へ戻す
先程まで滑っていた敵の作った轍の先に例の少年を見つける
「あなた…大丈夫?」
見た目無事なのだが、色々あった後というのもあり、つい声をかけてしまう
少年は瓦礫だらけとなった室内を、「あ、はい」と言いながら、転ばぬよう慎重に歩いて、私達の元へ来た
「ありがとうございます、助かりました」
そう礼を言う少年に、部長が後ろから口を開く
「無事で何よりって済ましたいのは山々だけど、幾つか聞きたい事があるんだ。えーっと…」
「あ、僕ウェンドロって言います」
「ウェンドロ、君に何があった?何かに巻き込まれたのか?」
部長の疑問―
それは私達の気になる所でもある
特に、何故あのトンファー男に狙われていたのか
答えの如何によっては、彼への警戒も必要になるからだ
ウェンドロはゆっくり、言葉を探し、選ぶように口を開いた
「…元々、一人じゃなかったんです。兄さんと二人で頑張ってたんですけど…兄さん、僕を庇って…死んだんです」
沈痛な面持ちで紡がれた言葉は、人の死
立ち入ってはいけない所だったかと後悔するが、その話を止めらず、当のウェンドロも話を続けている
「だから、兄さんみたいに強くなって生き残ろうと…まぁ、まだまだなんですけど、一人で頑張り始めたんです。そしたら…あの人が、突然…」
成る程
このウェンドロという少年は、あのトンファー男の気紛れに巻き込まれた被害者、という訳か