第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「あ…あ…」
トンファー男が現れた途端、金髪の少年の怯えが増し始めた
という事は、まさかこの男―
「何だよ途端にさっきよりもつまんなくなりやがってよ。ホレ、ホレホレ、殴っちまうぞ」
やっぱりそうか
この男が少年を襲っていた、という事か
ならば、この少年を守らなくては―
「止めなさい」
その考えが働き、トンファー男の前で立ち塞がる
トンファー男は一瞬邪魔をされたと言わんばかりに不機嫌さを表したが、私が誰ではあるかをすぐに認識したようで、その表情を明るくさせた
「あぁ…あぁあぁお前か。白いの、白いの!そこそこ久し振りじゃねぇか、どうしたんだよ?あ、そうか…やっと俺にアレを見せてくれる気になったか!そうなんだろそうなんだろ!!だったら来いよ、俺を楽しませろ!!」
口を挟むのも嫌になる
溜め息を吐きながら頭を抱える
しかし、言う事はキッチリ言わなくては
「……ざっけんな。誰がアンタなんか楽しませるか」
口を吐いて出た言葉は、普段の私からしてみれば有り得ない程荒かった
トンファー男は「お預けかよ…」とボヤいた後、非常に面倒臭いという雰囲気を全開にしながら口を開いた
「じゃあ、本題に入ってやるよ…そのガキ、こっちに渡せや」
全く頼む態度ではないまま口にされた要求は少年の引き渡し
「渡して、どうするつもりだ?」
少年を支えたままの部長が後ろから、強い口調で問い掛ける
だが、トンファー男はその語気に含まれたものを感じる事のないまま、当たり前の事であるとばかりに答えた
「決まってんだろ。ぶちのめすんだよ。決着着いてねぇからな」