第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
雨粒が身体に当たり、服を密着させる
体温が奪われる展開ではあるが、闘志は奪われていない
だが…どうする?
攻撃の為に使っていた足場は全て失われ、私達は攻撃の手段を無くしている
ボスは悠々と空中にあり、「やれるものならやってみろ」と言わんとしているようだ
勿論、私達もただ手をこまねいていただけではない
エリーを始めとする射撃兵装を持つプレイヤーが攻撃をしかけているが、盾と杯に邪魔されている
また、その間にも剣と杖は私達を襲い、ただその場にいさせる真似はさせないという予断を許さぬ状況が続いている
とにかく、今の私達には攻撃に必要な代物が無い
故に攻撃が限られてしまう
(どうする…どうする…?)
繰り返される自問自答は危険なのだが、その時私はそれに気付かなかった
故に、ボスの剣の回避先に巨大な氷塊が来ているのに気付くのが後れてしまった
その事実に漸くと言える程の一瞬で気付く
思わず顔を背け、手で防御姿勢を取ったが私を襲う衝撃は無かった
目を向けると氷塊との間に人影―ユウだ
「君もッ!迂闊だ!」
盾の武器スキルを発動させ、氷塊を止めている
しかしながら、更に氷塊が降り注ぎ、彼も抑える限界が見える
「だが、潰させん!!」
直後、彼の左からシンジ先輩
武器スキルを伴わせ、固まった氷塊を真っ二つに斬り―
「飛んでけよぉぉぉ!!」
―ユウから遠い方の半分を、ケンタが武器スキルを伴ったフルスイングで吹き飛ばす
雪合戦の雪のように、ボスに命中するがダメージにはなっていない
しかし、ユウが氷塊に潰されるという事は避けたのであった