第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
移動しながらも、エリーは敵へ矢を放っている
敵の本体ではなく、腕に当てて誘導を狙う
杖は更にこちらを追うかと思われたが、そのような事にはならなかった
代わりにシンジ先輩とケンタに誘導された剣が、真っ直ぐに高々と、空へ掲げられる
何をするという疑問の前に変化は起きた
ボスの剣を中心に生成される黒い雲―綿菓子の様に大きく、大きく膨れていく
私達人間が知る中で、そういう形をした雲は幾つかに限定される
例えばそう、積乱雲―
掲げられたボスの剣に雷が落ち、電気を纏う
振り下ろされた先、シンジ先輩とケンタは急いでその範囲から離脱したが、今までと違い縦に下ろされた剣は、幾つもの足場を破壊していった
それだけではなく、杯から強風が吹き荒れ、杖から雹が降り注ぎ、盾から火球が襲い掛かる
それにより更に足場が破壊され、私達がいる足場も危うくなってきた
「このままじゃ駄目だ!降りるぞ!」
部長の叫びを聞くと同時に足場が崩れる
幸い欠片はまだ大きい、故に欠片と欠片を跳躍し、地上へ降り立った
その後も油断は出来ない
地上にも足場が降り注ぐ為、ボスの動きに注意しながら、退却せざるを得なかったのである
そこそこの距離―一応の安全圏
その辺りに辿り着く頃には、嵐のように強風と強い雨がプレイヤー達に降り注ぐ
振り返った先、私を含めたプレイヤー達の視界には、それまでの頼みでもあった足場が全て崩れ去っているという、極めて絶望的な状況が広がっているだけだった