第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
ミヤは案の定意識を失っていた
彼女をキャッチしたユウに合流した私は、肩で息をしながら、彼女の肩を揺らす
「ミヤ!…ミヤ!」
「全く図太い奴…ほら起きるんだ!」
ユウがミヤの頬を軽く叩いていると、意識を取り戻したのか、ゆっくりと目を開いた
「ぁ…リィちゃん…佑ちゃん…」
とりあえず変な事にはなっていないようだ
私とユウから安堵の溜め息が漏れる
だがそれとは裏腹に、ミヤは危機を覚えたかのように瞳を大きく開いた
「あ、ヤバ―」
何かと振り返った先にはボスの杖―しかも既に迫っている
危険だ、と悠長に言っている暇は無い
私が避ける事が出来たとして二人は…?
(だったら―)
―抑える
そう考えた瞬間、私達と杖の間に人が割り込んだ
大きな斧、両手斧を持った影―ケンタだ
彼は自身の両手斧を、野球のバットのように構える
片足を上げ、武器スキルを伴わせ―
「一本足…打法ぉぉぉぉぉ!!」
ボスの杖を正面から叩いた
「ケン!!」
本来なら無謀極まりないそれではあるが、ケンタは拮抗を見せている
だが、相手はボスだ
徐々にケンタを押し始めている
「駄目だケン!君が―」
「心配すんな!!」
ユウの言を遮るケンタの言葉
押されているのは事実であるのに、今だ負けぬ強さを孕んだ言葉であった
「伊達にカッコ付けて出てきた訳じゃ…ねぇんだぁぁ!!」
直後、腕が光を纏う
押されていた状態からのブーストスキル
それは徐々に拮抗へと状態を戻し―
「だらぁぁぁぁぁぁ!!」
―遂には、ボスの杖を弾く事に成功した
まさにフルスイング
私からでは背中しか見えないが、ケンタ本人はドヤ顔を決めている所だろう
弾かれたボスの杖は上へ動き、空中にある足場の一つにぶつかった
大きな砂埃―それが収まった後、そこにあった筈の足場は、足場としての機能を失った土塊となり、崖の下へ落ちていくのであった