第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「ぐっ…ぅ…」
外套が激しくはためき、思わず顔を手で軽く覆ってしまう
風の勢いにエリーの放った矢すら、勢いを消され、落ちていく
風の爆心に近かったミヤとシンジ先輩は、その急激な勢いに勝てる訳は無く、二人は別の方へ飛んでいく
「クッ…ソ…!」
一瞬の強風が終わった瞬間、ミヤの元へ全速力で走り出すユウ
エリーは自身のチャクラムをシンジ先輩へ向かって放つ
シンジ先輩は空中で軽く回転したが、それが終わるとエリーの放ったチャクラムを、何とか掴む
直後、引っ張られるシンジ先輩とチャクラム
シンジ先輩は私達の近くの地上付近でチャクラムから手を離し、文字通り地面を転がって着地―部長がシンジ先輩の近くへ寄る
「シンジ、大丈夫か!?」
「…現実だったら酔ってた」
この回答にとりあえず安心したのか、部長は「なら大丈夫だな」と言いつつ、シンジ先輩の背中を軽く叩いた
一方のミヤ―
風の爆心から誰よりも近かった彼女は、回転が止まっても身体に動きが無い
まさか…意識を失った?
だとするなら、そのまま落着するのは危険だ
その考えが、私を走らせる
ユウも同じ考えに至ったのか、全くスピードを緩める事無く、ミヤの元へ走っていく
目測でも分かる―届くか届かないか、ギリギリの位置
「だとしても、届かせる!!」
そして、スライディングをするユウ
間に合わなければならない、しかし過ぎてはならない―それが焦りを呼ぶが、彼はしっかりとミヤの位置を見ていた
落着ギリギリの位置―そこでユウはミヤを抱き抱えるようにキャッチ
勢い余って、そのまま地面を転がって、二人は止まった