第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
「ん…バレた」
そうは言うものの、さほど問題ではないというようにエリーは追撃の矢を連続で放つ
だが、それらもまた盾に防がれていく
「そんなもの、ノープロブレム!ってな具合にするんですよね?」
そんな中、私の視界の右側―そこから駆け出す、ミヤ
そして反対側、私の視界の左からは―
「あぁそうだ!そうするつもりだから、お前もやってみせろ!!」
同じように駆けるシンジ先輩
ボスの腕が他の対応をしている間に、幾つか足場を跳躍して登り―
「隙有りの一撃!」
―それぞれ真横から跳躍、武器スキルを伴って飛び掛かる
相変わらず盾はエリーの放つ矢を防いでいる
だからこその隙、だからこその一撃―それを叩き込まんとミヤの短剣が、迫り、迫り、迫り―直前で止まった
「え…」
ミヤ本人の口から言葉にならない驚愕が漏れる
それもその筈―止まったのは短剣だけでなく、ミヤ本人もなのだ
何が起きた―と思う前にボスは自ら答えを明かした
杯―それに描かれたハートのマークが光り、そこから波動の様に風が起きている
何の意味があって杯なんて、とも思っていたが、どうやらアレは風起こしが出来る―しかも風向きという名目で指向性を持たせる事も可能なのだろう
だから今、ミヤの短剣と身体の勢いを消して、その場で停止させる風向きで風を起こしているのだ
「まだ俺がいる!!」
直後、ミヤの反対側から飛び掛かったシンジ先輩が迫る
ボスは相変わらずこちらを見ていないが、腕はしっかりと反応した
杯がまた光ったのである
何か来る―そう直感した私は今出来る最大限の力で鎌鼬を放つ
直後、杯から鎌鼬がシンジ先輩へ飛ぶ
通常なら直撃コースのそれを、私の放った鎌鼬が邪魔をする
激しくぶつかり、力と力の拮抗を見せた二つの鎌鼬は、打ち消され、消失した―周りに多大な風の波動を伴い、消えたのである