第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
突如、ボスが先制とばかりに剣を振り下ろしてくる
横飛びし、回避をするが、剣が地面に当たった振動で身体が揺らされる
抉られる地面の状態から、改めてボスの持つ攻撃力を物語る
だが、私は逆に考える―ここに囚われてから、いつもこうだったじゃないかと
全員リスクを覚悟でここに来ている―それは始めの時から変わらない
何を臆病になっている
随分とこの世界に毒されたものだ、とまるで現実のように考えている自分に自嘲的な笑いが浮かびそうになる
早速足場に飛び移り、ボスに攻撃を仕掛けている部隊を見ながら息を整える
ボスの剣が地面から浮き、今度は上の方―足場の方へ向かう
今の私に出来る事―それは、射撃以外でもこの位置から攻撃可能なタイミングを見つけて―
「一撃でも攻撃する事、俺も同じ考えかな」
先程まで剣があった位置を駆ける影―部長だ
「まぁ、半分ギャンブルだけどさ!」
部長は崖の先で跳躍、ボスが剣を上へ振った反動でこちらに向いた尾に槍を刺す
多少のダメージにはなっているようだが、特に怯んだ様子は見受けられない
部長はブーストをかけた蹴りで、槍を引き抜き地上へ戻ってくる
直後、頭上を通る矢―エリーの矢だ
連続で放たれたそれは、今しがた部長が槍を刺した位置へ真っ直ぐに飛んでいった
ボスはこちらを見ていない、故にそれは真っ直ぐに行く筈―行く筈の矢は、上から下がってきた盾に防がれたのである