第11章 第11層~第20層 その3 "事案"
扉を越えた先―目に入った景色は、崖と海だった
しかしそれは普通の景色ではない
崖の周りには、どういう訳か浮遊した大地が幾つもある
やろうと思えば、ブーストをかけた跳躍で届きそうな位置から上へ、上へ、幾つも浮いている
ボスは何処から?―周りが確認出来た辺りで参加者全員に疑問が浮かぶ
その疑問は、すぐに答えられる事となる
崖の向こう、空中である筈の空間から何かが回転しながら、上昇してきた
回転しながらでも、その形は分かる―カードだ
私達の知るそれよりも、大きなそれは徐々に回転数を増し、光に包まれた
目が眩むような閃光―それが収まった後に目の前にあったのは、巨体だった
人の何十倍はあろうかという巨体
白一色の身体は、四本の腕を生やした虫のようにも見える
身体の先は尻尾というか尾というか、ともかく鋭く一本、尖っている
それぞれの腕は剣、盾、杖、そして杯を、これが武器ですと言わんばかりに持っている
現れるHPバー
記される名前は―"Fourteen"
フォーティーン、つまりは「14」
そのまんまか―とツッコミを入れたくなる程の安直なネーミングだが油断は出来ない
そもそもが巨体だ
つまりそれに合わせた武器サイズである故に、一撃一撃のダメージが恐ろしい
そして何より、敵は常時空中にいる
我々プレイヤー陣は、空中に居続ける術を持たない
幸い、敵の周りには幾つもの足場がある為、攻撃手段が射撃しかないという事はないが、攻撃チャンスを掴む為には移動し、登らなくてはならない
移動中―もっと言うなら空中にいる間に、攻撃されるかもしれないという多大なリスクを払うのだ