第10章 第11層~第20層 その2 "Duet"
「先輩」
ユウは、回避の為自分達の所へ戻ったキョウヤに口を開いた
「あの二体…もう少し、僕達の方へ寄せて頂けますか?僕と彼女なら…何とかなるかもしれません」
意外、そして危険な提案
彼が良しとするか否かは微妙な具合だとユウは考えている
これに対して、キョウヤは静かに口を開いた
「死ぬような無茶は…しないな?」
重い質問だ、とユウは感じた
だが、これにハッキリと答えなければ、何も出来ないだろう
「僕も彼女も、死ぬつもりはありません」
「キチンと生きて、アレを倒します」
後押しするかのような彼女の声
(全くこういう時だけは、妙に頼もしい)
だが、ユウにとってはそれが今は嬉しくもあった
「…分かった」
ややあって、キョウヤは答える
「こっちも何とかしてみる。但し、絶対に死ぬなよ」
「「はい!」」
二人の返答を聞いたキョウヤは、頷き、もう一度駆け出す
ボスはまた、復活を見せていた
「いやぁ、凄い事になっちゃったね~。ちょっとドキドキしてきたかも」
「まぁ、大事な所だからね」
戦いの喧騒が近づくのを感じながら、ミヤコは隣のユウにもう一度話しかけていた
抑えられぬ緊張が、ミヤコの口を勝手に開かせている
反対にユウは黙りつつある
二人の考えた作戦―それは、二名による完璧なコンビネーション
ダメージ調整込みで、同じタイミングで相手に攻撃を当て続け、倒す
非常に単純で、非常に簡潔で、非常に難しい作戦
それに向かう緊張感が二人を支配していくが、彼は自らそれを二人の力へと変えるべく、口を開いた
「遥」
この呼び方に彼女は少しだけ、驚く
何故ならこれは彼女の本名であり、現実世界でも中々呼ぶ事は無いからだ
彼は彼女を真っ直ぐに見据え、手を差し出しながら―
「Shall we dance?」
―二人の契約を口にした
彼女の瞳に映るは彼のみ
最も近くに居続けた、彼のみ
そんな彼のお誘いに、彼女は―
「Of course!」
彼の手に、自らの手を重ねて応えるのであった