第10章 第11層~第20層 その2 "Duet"
割り込んだ影―ケンタは二体の間を割るように真上から斧を振り降ろす
コンクリートを抉る一撃にボス二体は僅かながらであるが、物理的な間を作る
「んなろぉ!!」
そこから逃がすまいと彼は、斧を下から掬い上げる様に振り上げ暗い黄色―αとある方を空中へ跳ね上げる
同時に黒―βとある方が何かに巻き付かれたかの如く縛られる
一瞬何かと思ったが答えはすぐに出た
ボスの身体の周りを煌めく線―チャクラムの糸だ
私の隣に降り立ったエリーが、左手を更に引き巻き付かれたボスを上昇させる
「二人共、随分流石って言えるようになった!」
言葉と共に降り立った部長が跳ね上がったαへ駆ける
そのまま、ブーストをかけた脚で回し蹴り―αを吹き飛ばす
「…っお!!」
隣のエリーはβをαの反対側に投げ、そこでチャクラムを外す
勢いがつき、派手に飛んでいくβをエリーは逃さず、更に空中のβに向けて、連続で矢を射かける
その数、六発
それら全てがβに命中―少し離れた場所へ無惨に落ちていった
αもまた、空中でシンジ先輩に蹴られ、別の場所へ空を滑り落ちていく
αが落ちた先―そこには、多数のプレイヤー
ここまでの感じとして二体同時に来るのならともかく、一体一体はそんなに辛い相手ではない
そして今、その"一体だけ"というものが、多数のプレイヤーの中へ放り込まれたらどうなるか―簡単である
答えは袋叩き
複数方向から連続で攻撃を受け、αは成す術無く、呆気無く砕け散った