第10章 第11層~第20層 その2 "Duet"
私がそれを直感した時から次の事態までは一瞬だった
それまで真っ二つだったボスが、脱皮するかの如くコンクリート色の身体を引き裂き、中から新たな身体を見せたのである
その数―二体
大きさは少し小さくなっているが、相変わらずの三つ目の仮面のような顔
片方は暗い黄色、もう片方は黒の身体を私達に見せ付ける
ボス戦で二体以上の敵が出現した例は以前からある
だからそれには慣れていたが、今回は初だ
ボスから二体現れた―これはどういう扱いだ?
頭に浮かんだ疑問に対してボスはHPバーでそれを示した
"Israfelーα"、そして"Israfelーβ"
そうかそうか、そういう事か
今回のヒントは"分裂する"事を示したという訳か
ならばアレは二つとも…ボス
恐らく全員がヒントの意味を理解すると同時にボスの顔が二体同時に光る
「っ!」
いつかもそんな事があったと記憶が私に素早く呼び掛け、私を真後ろのビルへ跳躍させる
瞬間―先程私がいた位置が爆炎に包まれ、汚くなったコンクリートを抉り、吹き飛ばしていく
着地と同時にボスの方を見る
爆風の中佇む二体のボス
それらは全く同じタイミングでこちらを向いた
そして全くの同タイミングで二体ともこちらに飛び掛かって来たのである
「こっち…くんなぁ!!」
剣を抜き、叫ぶと同時に剣を振るう
二体同時の腕とぶつかり合い、一人の私を呆気なく弾く
だからといって呆気なくダメージを受けたりはしない
後ろに向いた身体に勢いを付けて無理矢理後方宙返り―幾ばくかの距離を取る
だが、ボスは構わずとばかりに私に近寄る
足の出し方も、歩幅も同じなのが腹立たしい
次も力任せに剣を振るうかと考えていると、私とボスの間に割り込む影が上から降ってきた