第10章 第11層~第20層 その2 "Duet"
そんな用な会話を聞きながら歩いていると、当然体感時間は短いもので―
「はいはい、お二人さん」
「痴話喧嘩はお仕舞いだ」
―いつの間にかボス部屋前に到着していた
流石にボスというものが出す緊張感があったのか、ミヤとユウも会話を止め、扉を見つめる
二つに枝分かれした上半身を持つ一つの下半身―確かに情報の通りだ
これが何を意味するか、未だ分からないが…もう四の五の言っても仕方ないだろう
どういうものかは当たって確かめれば良い
そう私が思っていると、誰かが扉を押したのか開いた間から光が差し込む
「まぁ…持ってくればちゃんと感想は言うよ」
「あ…」
開いた扉に進む間、そんな呟きが聞こえたが反応を示す暇はもう無い
後の答えは、前に進んでからだ
光の先―視界に入るのは青と汚くなったコンクリート
日射しが強くなったのを感じ、フードがあるにも拘わらず手で顔に影を作る
周りを見回すと―水
その中にある沈みかけの建物に私達はいた
なるほど、ここも浸水しているのか
幸いというべきか、屋上が水上にあるものが多数あり、それを足場には出来るだろう
水の中は近くで見なくても分かる程深さがあり、浸かれば命の危機は免れないのは明白だ
周りの足場を確認した上で、もう一度周りを見回す
何処からボスが現れるか分からないからだ
しかしそのお陰か、周りを警戒する癖は付きそうだ
などと思っていると、少し遠い位置で派手に水飛沫があがった