第10章 第11層~第20層 その2 "Duet"
ボスが右のアームから素早く繰り出す鞭をジンは身体を傾けるだけで避けていく
巨大さに見合わぬスピードで繰り出されるそれは、一振りで二、三度の攻撃となるが彼は武器で払いもしない
「やはり機械か……単純だな」
そんなボヤきも入れられる程に、彼は余裕さを見せていた
一人勝手に先へ先へと進むソロプレイヤーの方が、同タイミングの他のプレイヤーよりも基礎スペックが高いと思わせる図である
だが、それに決定的に離されているだけの私達通常プレイヤーではない
基礎スペックの高さで圧倒するのがソロプレイヤーなら、食らい付いて倒していくのが私達だ
故に、こちらも負けてはいない
「真っ直ぐしか見てねぇから、こう横から便乗されんだよ!」
言葉通り、ボスの横からシンジ先輩が鞭のアームの間接部分に曲刀を刺す
アームに取り付いたシンジ先輩が、上手くバランスを取りながら曲刀を引き抜き、武器スキルを伴って鞭のアームを何度も斬っていく
ボスはこれに対し、左のアームに搭載されたキャノン砲で抵抗を示そうとするが―
「シンジ、そのままやっててくれ!」
掛け声と同時に槍が飛ぶ
部長が投げたそれは、ジンの頭を越えて飛び、まさに発射されようとしていたキャノン砲の砲口に命中―砲撃を中止させる
「だあぁっ!!」
すかさず部長は駆け出す
ジンの真横辺りで跳躍―真っ直ぐに槍の元へ飛び―ブーストした脚力で槍をボスへ蹴り込む
深く、勢いを持って撃ち込まれた蹴りに押された槍は、ボスのアーム内にあるであろう幾つもの回路を切り裂いて進み、肩口の辺りから突き抜ける
「よくやる」
その様子を見ているジンは呟きながら、改めて武器を構える
身の丈程もある両手剣
黒一色に染まっているそれは、何かの塊のようにも見える
彼は少し駆け出しただけで跳躍―部長が今いる高さよりも高い位置へ
ボスはこれに反応し、ミサイルを放つが彼はそれを斬ってボスへ落下していく
「トドメだ」
呟いた彼はそのまま真上から、武器スキルを伴ってボスを斬る
勢いをそのままに、重厚に斬られたボスは直後に砕け散った