第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
街に辿り着き、例の老人にクリアを報告―
また彼の長話に付き合い、漸くギルド作成に伴う設定を入れるという時、シンジ先輩が部長の手を止めたのである
「どうしたんだシンジ、こんな時に?」
「こんな時だからだ。確かめたい事がある」
あくまでも普段と近付けているが、何かあるのは私達にも伝わる
そんな口調でシンジ先輩は続けた
「キョウヤ、お前…細かくは決めてるんだな」
「あぁ」
重大な何かが潜んでいるのでは、といよいよ感じる口調のシンジ先輩といつも通りな部長―何か問題でもあるのだろうか?
「方針とかそういうのは構わん。その点についてはお前はまともだからな…だからこそだ。お前には、一つだけ止めてもらう事がある」
「……じゃあ、何だって言うんだ?」
二人の間に微妙に剣呑な雰囲気が漂う
現実でも、この世界でも、この二人に危うい雰囲気が漂ったのは初めてかもしれない―少なくとも、私の見た中では…
そんな雰囲気に圧され、私達も口出しが出来ず、静まる空気が続く中ゆっくりとシンジ先輩が口を開いた
「お前の……ネーミングだ」
(………………?)
三秒経って私の頭に浮かんだのは疑問だった
ネーミング―つまり、名付けという事だろうが…
(どういう事?)
全くもって謎であった
「べ、別にネーミングくらい良いんじゃないんですか?」
恐らく同じ疑問に至ったのだろうミヤが口を開く
正直私もその感覚には大いに賛成ではあるが、シンジ先輩の返答は私達にとっては斜め上に近いものであった
「馬鹿かお前等。コイツはな、他はまともに出来てもネーミングだけは中二病真っ盛りなんだよ」