第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
それは白い闇の中だった
"白"が私に纏わりついて来ていた
だから私は願っていた
"触れるな"と―"白"に消されそうな私が願う事
だから私は払っていた
これ以上消されない為に"白"を払っていた
"白"が来ると、私の頭の引き出しが開いて、払っているといつの間にか消えていた
払っている間は全てが白くて、まるで浮かんでいるようでもあった
"白"が消えた後は、いつも一人で独りだった
浮かんでいる間の記憶も曖昧で、思い出そうとすると、身体が"止めろ"と言わんばかりに震え、恐怖が浮かぶ
だから私は、そもそもそうならないよう、出ないようにしていた
だけどそれは、破られてしまった
その時やって来た"白"も、いつの間にか消えていた
でもあの時は、目覚めた後も皆がいて―一人でも独りでもなかった
だから次こそは…と思っていたのにまた、それも唐突に"白"はやって来て、私はまた浮かんでいく
やめて、来ないで、消さないで―"白"は私だから、"白"が来ると消えてしまう
そう思って払っている
だけど、今回は違った
声が聞こえて、"黒"が混ざりだして―だから今度は"消えるな"って、必死に掴もうとしていた
払うのも忘れて、手を伸ばす
声が聞こえる―死んでも気付けないと、この先に独りになると
そうだ、私は白を払って、塗り潰されて消されぬようにしていた
でもその先が独りになって、誰かの死も自分の死も気付けない
それは真の意味で皆を、自分を失う
それは嫌だ
それは消されたのも同じ―だから嫌だ
生き残っても死んでも一人で独り
それは嫌だ―皆と一緒に生き残りたい
(あぁ…そっか…)
いつか部長に言われた事が漸く合致して、私は"白"の先を掴んだ感覚と共に、目を覚ました