第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
言葉足らずだったろうか―しかし、気持ちは伝わった筈だ
そう信じて、エリーは彼女の頭部を先程よりも強めに抱き締める
これで彼女が元に戻らなくとも諦めるつもりはないが、この一回にエリーは気持ちの全てを懸けていた
故にエリーは彼女を抱き締める
これで自身に牙か何か、攻撃行動が来ればまだ彼女は元に戻らない事になる
だが彼女が戻る事を信じたエリーは目を閉じ、彼女の次の行動を待つ
数秒―永遠にも似たこの間を越えた先、彼女の腕は静かに動きエリーの背中に軽く乗せられる
「………」
ゆっくりと目を開くエリー
身体を少し浮かし、視線を向けた先―彼女と視線が交わる
彼女の手は牙に変わる気配を見せず、瞳に宿る光は獣のそれを失っている
「エリー…」
紡がれた彼女の言葉は小さいものであれど、確かに紡がれた言葉であった
「リリィ、戻った?」
静かに紡がれるエリーの言葉に、彼女―リリィは確かに頷いた