第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
叫びと共にキョウヤは踏み出した足で、自身の槍を跳ね上げる
彼女は一瞬動揺の色を見せたが、本能だけで上半身を反らし槍を避ける
しかし、そこで終わらせるキョウヤではない
身体を回し、落ちてくる槍を蹴る
それは真っ直ぐにはいかず、妙な回転が加わったものだが、彼女はそれを後ろに跳躍して避ける―
―そしてそれこそが、狙い
「エリー!!」
キョウヤの視界にはいないもう一人へ呼び掛ける
返答は無いが、既に動いているだろう
その予測通り、エリーは既に行動していた
彼女を越えた先にある木にチャクラムを巻き付け、現在の木から飛び降りる
直後、チャクラムを木から外し完全に浮遊―だが、エリーには着地先は見えていた
槍を避けた彼女である
「っ!!」
目論見通り、衝突
その瞬間に彼女を抱き、共に地面を転がる
先のキョウヤの如く腕を抑える真似はせず、ただただ、彼女の頭を抱き締める
回転が止まる時、エリーは彼女の上に乗る形になるが、エリーのとる体勢は変わらない
「ねぇ、聞いて」
自らの背中の上―空を切り、抵抗を示す彼女の腕を気にする事無くエリーは自らの胸元にある彼女の頭部へ声をかける
「いつかのボス戦、私は皆を信じる事を知った。誰かの姿、その全てを受け止める。だからね…そういうリリィの願いがあるって事も、私は受け止める」
呟きにも似た言葉を聞いているのかいないのか、彼女は腕を振り回し抵抗を続ける
その表情は、エリーに隠れていて窺うことは出来ない
しかし、そんな彼女を無視してエリーは言葉を続けていく
「でもね、今のリリィのそれはリリィを独りにする。私はそれが嫌。皆もそれが嫌。皆で生き残るのにリリィが独りなんて嫌。だから……止まって」