第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
そこへ彼女が絶叫を上げながら、まるで竜巻の如く迫ってくる
全て敵、全て触れるな、全て轍となれ―その願いに彩られた彼女の牙は、本来彼女の友である筈の者にも迫る
「駄目だって…前に言ったろ!!」
キョウヤがそこに割って入り、自身の得物である槍を横に持ち、彼女の牙を抑える
力の拮抗を見せたのも一瞬で、彼女は難なくキョウヤの槍を弾き飛ばす
その後も襲い来る彼女の牙をギリギリの位置を避ける
その速さを身体で感じ、今の彼女が人並みというものから外れているのを感じる
これでは彼女を能動的に止める事は出来ない事を悟る
故に―
「来いよぉぉ!!」
―キョウヤは彼女の牙となっている掌に自らの掌を重ね、受け止める
自らの首筋に迫る彼女の掌から狂気にも似た願いと手肌の感触を得る
一つ下の年齢の女性とは思えない程の重い牙に拮抗しながら、彼女の白い細腕を広げる
そうでありながら、彼女はキョウヤを押し込もうとする
「どこ見てんだよ…俺はここだぞ…」
後ろには"破壊のカリスマ"を何とか抑えている仲間がいる
故にこれ以上押し込まれる訳にはいかない
足腰を全力で踏ん張らせ、キョウヤは耐えながら、彼女へ口を開く
「お前、それも分かんないのか…そんなんだとお前…俺達が死んでもそれに気付けないだろ!!」
言いながら一歩、踏み出す
目の前すら分からない彼女に更に近付き、キョウヤは叫ぶ
「お前願いのある人間だろ!!お前の願いはなんだ!!バケモノみたいなもんに、お前の願いを喰われて…良いのかよ!!」