第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
エリーも一瞬目を閉じ、そしてキョウヤの元に集う
エリーは思い出していた
それは初めて彼女が人ではなかった時の後の誓い
例えどんなに厳しい戦いでも、皆がアレを出させない―それ故に自分も本気を出す
もう出てしまった彼女の獣
ならば今はそれを抑え、彼女を取り戻す為に、本気を出そう
「目標は二つ。一つ目はリリィを戻す事、二つ目は…その間あの敵を抑えた上で生き残る事……皆準備は良いか?」
キョウヤの言葉に各々頷いて答える
見ているだけは終わりだ
彼女を彼女たらしめる為に、本気を見せよう
「それじゃあ…スタート!!」
合図で一斉に走り出す彼等―その目標は二つ
特に誰が誰と班を分けた訳でもないが、自分の目標を定め、それぞれの目標に走る
片方―"破壊のカリスマ"へ四人
もう片方―獣の彼女へ二人
現状彼女を相手取れる実力を持っているのは、天才であるエリーと多少多くの経験を初めから持っているキョウヤしかいない
故に彼女へ向かうのは、二人だけなのだ
問題は残りの四人で"破壊のカリスマ"を相手取れるかである
直前まで七人で挑んでいた相手に約半分の数で挑むのだ、圧倒的に不利である事は間違いない
「うぉるぁぁ!!」
だが、それも関係無しと言わんばかりにケンタが目の前の戦いを割り、自身の敵へ斧を振る
攻撃自体は誰にも当たっていないが、敵は横槍を入れてきた事に対応する為、それまでより距離を取る
その出来上がった距離に、脚力にブーストをかけたミヤコが低い姿勢からの突き―真っ直ぐすぎるその動きは読むには容易く、敵は軽く後ろへ跳躍する
そこへ、飛んでくる何かの影―盾だ
敵はそれにも素早く反応し、飛んでくる盾を払い、落とす
「だからこそ!」
「撃ち込むんだよ!!」
盾の奥からユウが、回り込むようにシンジが、そしてミヤコを飛び越えてもう一度ケンタが敵に迫る
敵は素早く双刃剣を出現させるとユウとケンタをそれで抑え、残った腕でシンジの曲刀を受けて抑える
敵自身へダメージは入るが、まるで胴体に直撃よりはマシというような動きである