第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
立ち上がった敵はここで武器を捨て、両の拳で構えた―格闘戦に持ち込むつもりだ
だが、彼女には関係無い
目の前にいる死神、それを排除し、自らの轍とする事
その為に彼女は絶叫を上げながら、突っ込んでいく
徐々に加速する彼女の拳―というには牙に近いそれを敵は―まさかというべきだろうか―回避し、逆に拳を撃ち込む
だが、彼女には当たらない
彼女の頭を覆うフードが拳に切り裂かれ、彼女の持つ白くたゆたう髪が露になる
「うぅぅぅぐぅぅぅぅぁぁぁ!!」
しかしそれを彼女は理解していないだろう
彼女は白い髪を振り乱しながら、連続で敵に牙を撃ち込む
だが敵も互角に戦う
時に牙をかすらせるものの、大半を避けるか流すか、受けている
加速を続ける彼女にも追い付いて、敵も拳を撃ち込む
しかし彼女にはそれは当たらない
彼女の肉体には当たらないものの、彼女を覆う布の数々を少しずつ切り裂き、彼女の"白"を際立たせる
彼女はそれもまた、気に止める様子は無い
まさに化物と獣の戦い
それをエリーだけでなく、仲間達も見つめていた
こうなった彼女は敵を倒し尽くすまで止まらない
誰よりも速く、誰にも触れるなと願う―故に止められない
彼女の純粋な願いに基づく殺戮を見続けるしかない
「いや…ダメだ…」
殺戮の決闘が続く中、静かにキョウヤが口を開いた
"破壊のカリスマ"との戦闘により、本人のダメージが著しいが、これだけはと言わんばかりに傷ついた身体に鞭を打つ
「これを許しちゃいけない。戦力差のデカすぎる相手に挑んで、仲間を…人じゃなくさせてしまう。その責任があるから、これを許しちゃいけない!」
疲れとダメージで上手く口は回らないが、その意思は皆に伝わり、皆を奮い立たせる
「今度は違う要因だったとは言え…出させるものかと思ったのは俺達だ!……止めよう、リリィを」
キョウヤの言葉
それに応えるかのように皆がキョウヤの元に集まっていく