第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
直前に投げ飛ばされ、ミヤコと派手に衝突し、意識を失っていたエリーが自身の意識を取り戻す
「………」
意識を取り戻て初めてエリーが見た光景、それに絶句していた
目の前に見えるは二つの影
一つはこれまで戦っていた敵―"破壊のカリスマ"と称され、自分達七人を常時圧倒していたカブトムシ人間―それが剣を振り下ろしたまま固まっている
そしてもう一つはエリーの仲間―生まれながらにして"白"を背負って生きる少女―それが敵の剣を、口で抑えている
拮抗する力を、震える剣が示す
「リリィ…?」
特に何という訳でもないエリーの呼びかけ
だが、それに"まともに"答える者はおらず―
「うぅぅぅあぁぁぁぁぁ!!」
―剣ごと敵を投げ飛ばす彼女の叫びが響き渡るのであった
投げ飛ばされ、木に衝突した敵に彼女は容赦無く迫る
そのスピードは普段の彼女ではない
いつかのボス戦で見せた、獣の彼女である
武器をボウガンに変化させ、敵は彼女を迎撃するが今の彼女には当たらない
絶叫を上げながら迫る彼女は速い、何者よりも速い
故に当たらない
今の彼女は"死"という概念に対して、自分に"触れるな"と願い続けている
故に当たらない
ジグザグを描きながら真っ直ぐに彼女は弾丸を避け、敵に迫る
跳躍し、右手で敵の顔を掴み、敵の真後ろにある木を薙ぎ倒しながら敵を地面に叩き付ける
「あぁぁぁあぁぁぁぁ!!」
そのまま敵が地面を滑るように低く投げ飛ばす
その勢いは強く、幾本もの木を根から破壊し、敵の背中が地面を抉り、轍となる程である
「ゔあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」
再び絶叫を上げ、敵へ猛スピードで迫る彼女
余りの速度で周囲の倒木がエリーや仲間達の元へ激しく転がり、ギリギリダメージにならない程度の危害を加えているが彼女はそれに気付いていない
何故なら今の彼女は、彼女でありながら獣だから―自らの願い以外は、目に入らず耳に届かない