第9章 第11層~第20層 その1 "Original"
迫る敵の蹴り―しかし、それは二人に届く前に別の影に止められた
割って入った二つの影―部長とシンジ先輩だ
二人は各々の武器を敵の足に当て、勢いを殺そうとしている
だが、敵は空中にありながら更に力を込めた
直後、二人はあっさりと弾かれ吹き飛ばされた―しかしながら、抵抗の甲斐はあったのか敵の蹴りの方向をずらす事には成功し、誰にも当たる事無く地面を抉るだけに留めたのである
だが、それでも何も良くなっていない
敵は剣を構え、倒れたままのミヤに迫る
駄目だ駄目だ駄目だ―
何が駄目か等微塵も細かく感じなかったが、とにかく駄目だと感じて駆け出す
脚力にブーストをかけ、敵とミヤの間に割って入り、敵の剣二本を自分の剣と鞘で受け止める
直後、あっさりと鞘が斬られる
すんでの所で手を引っ込めた為、腕を斬られるという事態には至らなかった
「ぐぅぅっ!!」
押し込まれそうになっている部分を無理矢理支え、腹へ蹴りを入れようと足を繰り出す―が、不格好に繰り出したそれは、悪い動きだったらしい
既に振られた剣を手から外した敵が、またあっさりと私の足を掴む
しまった―等と思う暇はなかった
敵は私の足を引いて体勢を崩すとその勢いのまま、私を上に投げ飛ばしたのである
またも回転する視界
だが、投げられた距離がある
それを反撃に、と考えたがそうにもいかなかった
視界の回転が止まると同時に、敵が私の真上に現れる
視界に敵が入った時、既に敵は電気を纏った拳を振り上げており―当然躊躇いも無く、それが私の腹へ―
直後、意識が飛ぶ
次に感じた事は身体が地面に叩き付けられる感触だった
空中から落ち、腹には電撃込みの拳を撃ち込まれ、地面に叩き付けられる
痛いとかそんな事以上に身体が動かなかった
視界の端に大きめの影―敵と認識するのに三秒はかかった
敵は剣を振り上げ、いつでも私を殺せるようにと立っている
「……ぁ…ぅ…」
口から漏れるのは言葉にならない息遣いのみ
身体は動かない
目の前の剣―もしこれが私を襲うなら…
(私は…死ぬ…)
そう確信した瞬間、剣が振り下ろされる
停止した思考の中、私はいつかもあった"何かが嵌まる"感じを得るのであった