第2章 第1層~第10層 その1 "旅の始まり"
手を掴んだ何者かは、人込みに関係無く進んでいく
だからこそ、私はそれに引っ張られるだけになっており―
「わっ…おぶっ…」
阿呆な声を上げる羽目になった
だが確実に人込みからは外れてきている
何十人にぶつかったかは知らないが、とりあえず外には出れそうだ
次第にぶつかる回数が減り、視界が広がり、空気が涼しくなり――漸く人込みから外れた
「はぁ…はぁ…」
人込みからは出られたが、最後の数分により疲れが増した様に思える
いや、空気が変わっただけまだマシだろう
「とりあえず、リリィ確保」
手の先を見るとエリーが握っていた
さっきの人込みを、あの身体で高速で抜けていたのだろうか
だとしたら大した身のこなしである
軽く息を整えて周りを確認する
私を連れてきたエリー、疲れた顔の部長、人込みに潰されたのかぐったりしているケンタとそれを支えるシンジ先輩、そして頑張って抜けてきたのであろう息を整えているユウとミヤ
とりあえず私の知る知り合いは、全員いる
見た目をそれ程気にしない彼等は、先程と姿か変わっていない
私だけが、元に戻った