第2章 第1層~第10層 その1 "旅の始まり"
息を整えたせいもあり、暫く誰も喋りはしなかった
「ってか…ってか!!何なんスかアレ!!」
意味が分からない、という様子のケンタが口火を切った
「相変わらずログアウトは出来ない。これは本気の線を考えた方が良いよ、ケン」
改めてメニューを確認していたユウが冷静に言う
言われたケンタは「何だよその無駄な技術…」と頭を抱えていた
確かに無駄な技術だ
たかがゲーム如きにわざわざこんな技術を搭載し、命を懸けさせる
端的に懸けさせる物が違う、金を懸けさせた方が良かったのでは……
「ともかく…どうする?」
部長を見たまま、シンジ先輩が口を開く
私もそれに倣って、部長を見てしまう
深刻な顔…それはそうだ
こんな状況を分かってゲームを始めた訳ではない
「まず…今日は休もう…」
ややあって、部長から声が漏れた
「それで、明日以降どうするか…考えを出す。皆も考えといてくれ…」
夕陽に照らされる部長の顔は、深刻を越えて最早色が変わっているように見えたが…恐らく私も含めた皆もそうだろう
こうして、私達の死ねない旅が始まった