第2章 第1層~第10層 その1 "旅の始まり"
「……待てよ」
呆然とした空気の中、誰かの声が響いた
「待てよ!!そんなんで納得出来るわきゃねぇだろ!!」
彼の一言が空気を変えた
藤井氏への怒号と罵声が今度は場を支配した
怒号と罵倒は更に広がり、小規模な暴動へと発展した
ただでさえの大人数、それが暴動に近くなればどうなるか―揉みくちゃになる
広場の中央にある鐘の塔に人が殺到する
動くつもりはなかったが、後ろから来たプレイヤーに押され体勢が崩れ、一瞬でミヤが見えなくなった
とにかく人込みの外に出なくては…
街の中でギャグみたいに倒れている訳にはいかない
人の流れに逆らって動く
しかし、中々外に出れない―人が多すぎる
全員で何人いるのか気になるくらいだ
人と人の間の僅かな隙間を通る
次のスペースを探して、手を伸ばす
伸ばして、伸ばして…逆に何かが、私の手を掴んだ