第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
何が起きたか始めは分からなかった
いや、今も分かっていない
分かる事は急に頭痛が起きたという事
そしてそれが、今までにないくらい痛い頭痛だという事
「…っ…ぁ…」
余りの痛みに剣を手から滑らし、膝から崩れ頭を必死に抱える
視界に入る人々も、同じように頭を抱えている
何をした、何をしたと痛みの合間に疑問が浮かび流れる
そしてそれは一つの記憶に辿り着いた
ヒントの絵―その中のイルカ
(なら、答えは…)
――超音波
人間が聞き取る事の出来ない高周波もしくは低周波の音
イルカ等の一部の海中生物は、同族とコンタクトを取るのにこういう音波を用いる
それをわざわざ人間に頭痛を与えるレベルに設定しているとは…中々嫌らしい敵だ
口を開いたままのボスがゆっくり
甲板を移動し始めた
脇で苦しむプレイヤーを跳ね飛ばしながら、真っ直ぐの方向へ進んでいく
またこれか、また私の方かと思いながら剣を支えに無理矢理立つ
相変わらず頭は割れるように痛い
お陰で少しふらつくが、どうだって良い
アレをどうにかしなくては…
自分が動くという事は何故か頭に浮かばず、ボスをどうにかする事ばかりが頭を漂う
近付くボス
巨体が私を跳ね、潰そうと迫る
いいや、飛ぶのはお前だ
「づあぁぁぁぁ!!」
腕力ブーストと武器スキルの両方を伴って、ボスに正面から横方向に剣をぶつかる
今までで一番"斬る"からかけ離れた一撃はボスの移動と拮抗した
しかし、向こうは武器をもう一つ使っている
超音波―これにより、私の頭は危険な方向に沸騰し、割れるよりも脳が溶けるような感覚が私の腕と足の力を弱めていた