第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
開いた扉の先、射し込む光は既に眩しく、私はフードをいつもより深くする
扉を越えた先の景色、次に見えたものに私は思わず息を飲んだ
広がるは海―その水平線は遠く、今までで一番広いのではないかとも思われる
周りを見回すと、幾つもの船
巨大な船だ、もしかしたら空母の類かもしれない
平たく広がった甲板にプレイヤーが分散している
しかし、ボスは見えない
(違う…多分…)
こういう時の典型は―魚
という事は…
考えが纏まりかけた時、私達のいる船が揺れた
やはり…そうか
今回のボス、それは水中から来る
影が急に濃くなった場所を見ると、案の定何かが―いやボスが飛び出した
薄い肌色の肉体
深海魚かと言いたくなるようなくらい、グロテスクに、裂くように開かれた口
いつかのボス戦で見たような骨っぽい仮面をつけた巨大な魚
現れるHPバーに浮かぶ名前はGaghiel―ガグヒエル…いや、ガギエルだろうか
この際どっちでも良い―とにかくやる事は一つ、このボスを倒して先へ進む事だ
ボスは再び水中へと潜り、姿を消す
相手は魚型、なら水中戦を挑むのは愚の骨頂
厳しいが、出てきた一瞬にダメージを与えるしかない
その結論に至った時、ボスが再び現れた
大口を開けて、私達目掛けて飛び掛かる
実質突然と言える襲撃に、対応したのは部長だった
いち早く動いた部長は、緩やかに弧を描くボスの懐へ潜り込み―
「っぁ!!」
―後方宙返りの要領でボスの腹へ蹴りと槍を撃ち込み、ボスをもう一度水中へと流した