第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
第十層―ベラウを中心の街としたこの層は、海の一言に尽きるものだった
街の中も何処かの常夏の島国を思い起こさせるこの層で、爆発的に流行り出したものがある
一つは釣り
既に釣具の類は売られていたし、釣り場前の層にある事はあるのだが…何分釣り場そのものが少なく、釣れる魚も余り無い事から余りやる人がいなかった
しかし、この十層から急激に釣り場が増え、釣れる魚の種類も同様に増えた為、所謂釣り人が大勢現れたのだった
私達の身近ではケンタが、それに値するのだが―
「調子はどうだい、ケン?」
「うるせぇやい…次こそ一匹くらい釣ってやらぁ…」
―という具合であり、毎度毎度ストレージに追加が無いまま戻ってくる日々が続くだけであった
もう一つはギルド―要は正式な団体の作成である
この第十層より導入されたギルドというシステムは単にパーティ―徒党を組むのとは違っていた
通常、パーティという形で出来る人数は最大7人とかその程度で私達のレベルが限度だった筈だ
しかしギルドはそれ以上の人数を、パーティとは違う一つの団体に所属させる事が可能だ
それ故、パーティ上限以上の仲間が出来たプレイヤー達には、より強い意味合いで"仲間"を意識させる所があったのだろうか、作成権を得るクエストに飛び付く人々が多かった
現状ギルドは、シモンを中心とした「紅蓮団」、セガールを中心とした「沈黙淒艦」を代表例として大小様々に成立している
これに伴い、別の変化が生まれた
誰ともパーティを組んでいないプレイヤー
これまでそれは所謂「テスター」と呼ばれるプレイヤーが多かったが、ギルドの出現に伴い「テスター、非テスターにかかわらず、ギルドに入っていない、誰ともパーティを組んでいないプレイヤー」の事を「ソロ」と呼ぶようになった
これでプレイヤー達の構造はこれまでと少し変わったが、私達は相変わらず徒党を組んだままであった