第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
「クク…馬鹿に馬鹿呼ばわりたぁ、面白ぇ!!」
罵倒した筈なのに面白がられた
誠に不愉快であるが、彼には関係無いらしい
彼はそのままブーストスキルを伴わせ、正面からボスを殴る
少し浮いた瞬間を狙ったそれは勢いという指向性を与え、ボスをそのまま正面に吹き飛ばす
部長とケンタが急いで避けた先にある塀にボスが激突し、数本の腕で体勢を立て直そうかという時―トンファー男は既にボスの正面に立っており、自身の獲物であるトンファーに光を纏わせていた
「お前も楽しかったけどよ、あっちの方がもっと楽しそうだから…死ねや」
さも簡単な理屈であるかの様な軽い口調
ボスに向けた言葉の直後、彼は塀際のボスを連続で殴り出した
それは一方的で、殴るだけではなく、まるでボスの身体を抉っているようにも見えた
殴られ続けるボスは凹み、影が飛び散り、腕を引き抜き千切られまさに霧散していく
「ハハハ…クハハハハ…」
笑いながら彼は殴る頻度を上げていく
その姿はまさに蹂躙の二文字であり、逆にボスが不憫に見えてくる程であった
しかし、彼は止まらない
ひたすらにボスを殴り続け、ボスが結晶となり砕け散った後も二、三発塀を殴って漸く止まる―まさに修羅だった
「殺っちった。まぁ、いいか」
空間が元に戻る時に呟き、歩き出すトンファー男
極めて当たり前で散歩でも行ったような感じで歩いたが数歩した所で振り向いた
「剣で床抉る馬鹿は中々いねぇ。今度気が向いたらアレでも良いが、もっと面白いモン見せてくれよな」
そう言い、彼はまた歩き出し、去っていった
ボスは倒した
しかし、彼という懸念材料が残る結末―まだ彼に付き纏われるのか…と私は不安の溜め息を漏らした
ここに第九層はクリアされたのである