第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
「オルァ!」
トンファー男が先手を取り、右手側で正面から殴りかかる
真っ直ぐに飛んだそれをボスは三本の剣で受け止め、反撃に入る
自身の仮面を越えるように全ての正面から、剣を突き出す―その数は人間が対処出来る数ではない
「ハッ―」
普通の人間なら恐怖を覚えてもおかしくないそれに、彼は軽く笑った
まだ笑うだけの余裕があるのか、それとも…
「んなモンがよ!!」
抑えられた右手を無理矢理動かし、弾いた剣と共に数本を防ぐ
更に左手を払うように動かし、トンファーで剣を流している
しかしながら、全てを防ぐ事は不可能なようで掠めるようにして命中した剣が、僅かながら彼にダメージを与えていく
その事実も彼にはどうでもいいようで、笑いながら剣を弾いていく
「……仕方ない」
トンファー男一人に支配された場の中で、部長がゆっくりと口を開いた
「皆、いつかの時と同じやり方で行こう。彼を囮に、ボスを倒す」
第六層ボス戦と同じ戦術―あの男がいる限り、まともに戦えない
ならば彼を囮に―あの時は邪魔とされ、こちらにも攻撃してきたが今回はどうか…
いや、考えても仕方ない
あの男はあの男でしか分からない故に、全ての結果はやってからでないと分からない
故に…私は容赦無くやらせてもらう
「それじゃ、スタート!」
部長の号令と同時に私は下から斜め上に斬り上げるように、鎌鼬を放つ
真っ直ぐボスへ向かった斬撃は、普通に行けばトンファー男ごと斬るルートを通っているが、気にする必要は無い
直後、ダッシュ―あの男に対抗する訳ではないが、正面からボスを受け持つように走る
「…あ?」
どうやってかは知らないが、トンファー男が鎌鼬を避ける
彼の真横を通った鎌鼬は、ボスの腕を二、三本斬り落として空へ消えた
私はそのままボスの正面からブーストスキルをかけた斬撃を繰り出すが、別の一本に抑えられてしまう
「何だいたのか、知らなかったぜ」
私に会話をしている暇は無い―特に彼とは
事実今は私に数本、追加の剣撃が襲いかかっている
ブーストを無理矢理保たせ、抑える剣を払い追加分を勢いのまま連続で払う
「ほぅ…やっぱお前アレだな。面白くしてくれんだろ!!」
トンファー男が隣に立ち、私と同じように剣を払い始める
しかし私には、文字通り彼がそうし始めた程度にしか認識していなかった