第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
Magician―マジシャンと読むであろうそれは、影のように黒い身体である
身体と言ってもそれは無数の腕と手で構成されており、身体も、仮面も、腕が支えている
残った腕は幾ばくもしない内に、剣を呼び出す
大量の剣を持つ影―それと今回は戦うというのか
「…皆、やろう」
部長の号令に頷き、動こうとした時―
「見、つ、け、たぁぁぁぁぁぁ!!」
後ろから声が響く
つい最近聞いた、聞きたくもない声…まさか―
「退けよ雑魚が!!」
軽い人混みみたいになっている部分を無理矢理破壊して、こちらへ向かう一人のプレイヤー
あのトンファー男だ
集中したい時に、何て最悪のタイミング…と心の中で毒づきながら舌打ちをする
だが、本人には聞こえていないようで、人混みを抜けると私達すら飛び越えて、ボスの目の前に降り立った
「魔術師、魔術師魔術師、マジシャン魔術師!一番で、可能性で、エネルギーで、空回りで、裏切りで始まりぃぃぃ!!」
捲し立てる彼の言葉は、正直分からない
繋がっているようにも聞こえるし、繋がっていないようにも捉えられる
しかし、この発言にハッとしたのは部長だった
「そうか…タロットの大アルカナ…」
タロット…と言うとよく占いとかで使うアレ、だろうか
だとするなら、これはその内の一つを形にしたという事だろうか
だとするなら、何でこんな妙なデザインにしたかツッコミを入れたい所だが、今はその時ではない
「だったらその概念でよぉ…楽しませろ!!」
相変わらずの理屈でトンファー男が駆け出す
正面から正直に突っ込んで行く
ボスもそれに合わせ、動く
腕を脚のように使うそれは、意外にも速く、簡単に両者を引き合わせた