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SAOGs

第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"


それなら何故ボス戦に参加したと言われそうだが、不安の中だからこそ私はそれを戦う事で忘れたかった
ボス戦ともなれば、否応無くボスへ集中せざるを得なくなる
しかも今回は最初にボスと当たる
余計な事を考えれば死ぬから、忘れるにはもってこい…という訳だ

ついこの前まではこんな事など考えなかった
付き纏われる不安も、戦いで忘れようという安直な考えも
随分とこの世界で生きる事に慣れたものだ、と自嘲的な息が漏れる
現実だとこんな事、ありはしなかった
この世界にいるからこそかもしれないが、本来なら無くて良かった筈のものだから…

(そういえば…)

頭の中に現れた"現実"という単語に思考が移る
ここはゲームだ、間違えてはいけない
現実の私は医療機関で、毎日色んな人に心配をかけながら、寝ているだけ
それが本当で正しい筈なのに、どうして意識的に思い出さないと出なかったのだろう
"死ねない"という事象が、そんなにも現実感を与えているのだろうか

だとするならば、恐ろしい事だ
仮装現実が現実に成り代わる、何処かのSF映画みたいな事が起きている
現実に戻る為にクリアするという大前提が、ゲーム内の生活によって歪み、忘れられ、クリアするというものだけが都合良く残る

ならば生活するなという安易な事柄でも無い
事実現実の様に疲労や疲れを感じたり、現実の様にちょっとした事で死ぬ
全く藤井氏は何て物を作ったのだろうか
嘘の現実を真実の現実に摩り替えるものなど…そこまでして何がしたい?


思考を続ける私の視界、目の前に壁が現れる
見上げると芸術にも見える絵―そうか、もうボス部屋前か
頭を軽く振って、さっきまでの考えを払う
これ以上は駄目だ、本当に死んでしまう

一呼吸し、頭を切り替えて、ボス部屋へ入る事となった
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