第8章 第1層~第10層 その7 "一区切り"
目を輝かせ、言いながら少しずつ私に近付く彼を止めたのは部長とシンジ先輩だった
私の前に立ち、トンファー男の前に立ち塞がる
「…んだよ、邪魔だ退け」
二人を心底邪魔そうにトンファー男は口を開くが、二人は動かない
「そっちこそ止めて欲しいんだけどな、そういうの」
「ってか面白いものを見たいなら他を当たれ」
場を静寂が支配し、緊張がその場に停滞する
三人、いや二人と一人という構図は、互いが邪魔であるかのように視線をぶつけ合う
ややあって、トンファー男の方が溜め息を吐いた
「まぁいいか。後に楽しみはあるし、今は我慢をしてやるか」
してやる、の部分をやたら強調しながら彼は、道を帰る方に進んでいった
「だがまぁ、楽しみにはしてるぜ。お前がアレを見せてくれる時をな」
彼は歩きながらそんな事を口にし、私達の視界から去っていった
完全に影も見えなくなった所で、溜め息が深く、深く漏れる
私は一言も口にしていないのに、最大級に疲れた感じ―ある意味ボスよりも酷いかもしれない
「あの…ありがとうございました」
「いや、気にしないでくれ」
部長の緊張が溶けた表情のお陰で、嫌な気分が少し晴れる
今回に至っては、先輩方二人に感謝だ
「しかし、お前も妙なのに目を付けられたな」
その通り
確実に存在する問題を突いたシンジ先輩の言に私は肩を落とす
本当に、勘弁して欲しい
「大丈夫」
私の視界に入るように動いたエリーが、私の右手を握り、見つめてくる
「何かあったら、私がボコる」
「うん…ありがと、エリー」
多少荒い言葉であっても、今は向けられる気遣いが嬉しかった
それだけで解決する訳ではないが、今はこれで良い
その後私達は、その場を後にして街に戻り、ネリーに情報をリークするのであった