第7章 第1層~第10層 その6 "Once More"
「皆走れ!!ボスに構うな!!」
部長が叫んだ瞬間、参加プレイヤーが一斉に走り出した
目指すは一点―落ちてない場所である
ただ、このステージはコンテナによって狭く作られている
故に40~50人もの人間が一斉に通ろうものならどうなるか―答えは簡単、詰まるのである
その様子は日本国の夏と冬に開催されている某イベントの縮図の如き人込みで、必然的にスピードが遅くなるのである
よって私達が迷路のような道を抜けて、まだ落ちていないエリアに辿り着いた時は既に残り時間が30秒も無かった
後ろ―来た方向を振り替えると、私達を迅速に逃がすのにボスと戦っていた部隊がまだ残っている
「早く来て!!」
そう叫んでしまったが、向こうはそう簡単にはいかない
攻めるだけの戦いから逃げながらの戦いにシフトしてまった
だからこそ、ボスに動く暇を与えてしまう事になり、彼等の撤退を妨げていた
しかし、無情にも過ぎていく
彼等が私達、既に撤退を完了した部隊の前に姿を現した時は既に5秒も無い
だが…5秒あれば…間に合う筈―そう感じた私の感覚は直後の事態によって破壊された
後ろからボスが高速で接近、彼等を全員左腕の鞭で捕まえたのだ
宙吊りから更に、ボスの後ろに投げられる―そして時間は、0になる
ボスが上に跳躍した直後、故障したエレベーターが落ちるかの如く下へ、下へ、ズレて落ちていく
響く彼等の悲鳴、いや断末魔か
私は思わず彼等に手を伸ばすが、そこには物理的な距離があり―届かぬまま、彼等は落ちていった