第7章 第1層~第10層 その6 "Once More"
「………」
言葉無く、手や顔にかかった粘液を見て震え、呆然とするミヤにまだ近くにいるボスがまたもミヤを襲おうと近寄る
「全く…しょうがない奴!!」
ユウが脚力にブーストをかけ、高速でボスとミヤとの間に割り込む
もう一度振るわれた左腕を武器スキルを伴った片手斧で跳ね上げる
「っ!」
跳ね上がった左腕を逃さぬかのようにエリーがチャクラムを射出
上手く巻き付いたそれがボスの行動を抵抗へ、そして狙いをエリーに向けていた
この間にユウはミヤを連れて私達の後ろへ退がる
引っ張られたミヤは立ち上がり、走る事は出来たが、当然それだけでは粘液は取れない
先程のパニックとはまた違うパニックに襲われていた
「うぇぇ…やだこれぇ…ベトベトするし臭いし…取ってぇ、佑ちゃぁん…」
「あぁはいはい、分かった分かった。臭いのは分かったから、とりあえず君は落ち着いてくれ」
最早踏んだり蹴ったりのミヤは、ユウの身体にボスの粘液をヤケクソの様に泣きながら擦り付けていた
「すいません、そういう訳なんで―」
「大丈夫だ。そっちには行かせない」
ミヤを落ち着けるまでユウが一時離脱
これはまぁ…仕方ない類いだ
やれる事は部長の言う通り、行かせない事
それを実行する事
始めにボスをチャクラムで抑えていたエリーが跳躍―コンテナを蹴る三角飛びから矢を放つ
チャクラムを回収すると同時に幾つもの矢がボスに降り注ぐ
その矢を掻い潜るかのように部長が接近し、腹と胴体―身体の接合部分と思われる部分へ槍を突き刺す
「もういっちょだ!」
次に接近したケンタが槍のすぐ隣に両手斧を刺す
そして二人同時に脚力にブーストをかけ、ボスへ蹴りを入れる
ブースト分もあってか、武器が抜けただけでなく、ボスが壁にぶつかる程跳び、鉄の壁を歪ませた