第7章 第1層～第10層 その6 "Once More"

そして狭いが故に交代も一筋縄ではいかない
私達と今の部隊は良いものの､他はどうするのだろう…そう感じているが､もし詰まったならその分私達が粘れば良い
それだけだ

そう感じながら､前へと躍り出る

｢うぇっ…やっぱキショ…｣

そうボヤくミヤの声を耳にしながら､私はボスへ駆け出す
確かに気色悪いが､それで倒せる訳でない
ここは覚悟を決めよう

力任せに振るわれるボスの左腕―だがやはり力任せだ
回転をかけながら横へ軽く跳ねるだけで避けられる
呆気なく懐へ入り､横薙ぎに剣を振るうがボスが跳躍し､斬撃は空を斬る
上を見る､が真上にはいない―こういう時のパターンは…後ろ

私が振り向いたと同時に､一番後ろにいたミヤの真後ろに大きな影が現れる

｢え?｣

振動から気付いた時はもう遅い
鞭状の左腕がミヤの足首に巻き付き､急速に宙吊り状態にしてしまう

｢ぁ…あ…あぁ…｣

気色悪いものは逆立ちして見たって気色悪い
獲物をよく観察するようなボスに､ミヤの声が徐々に変わる

｢やだ…やだぁ!!こっちくんな､こっち見んなぁ!!｣

パニックに陥ったのかミヤが短剣を滅茶苦茶に振り回す
必死に拘束から逃れようともがき､身体ごと動かした結果､短剣がボスの脇腹に刺さり拘束から見事解放されたのである
しかしミヤの災難はまだ続いた
録に着地も考えられぬまま､尻餅をつくように落ちた彼女に､ボスの傷口から吹き出した粘液のようなものが彼女の全身にかかったのである