第7章 第1層~第10層 その6 "Once More"
改めて撃退数を数え、クリアした事を知る
いや、正確には目標に達した事を報告しなければクリアにはならないが…まぁ、その辺は良いだろう
今は激しい戦いからの解放に浸っていたかった
「しかしキョウヤ」
街へ帰る道すがら、不意にシンジ先輩が口を開く
「まだまだ素人の俺が言うのもアレだがお前…動きが良くなったな」
「いや…試作版の時の感覚を、漸くちょっと思い出したくらいさ」
そんなに凄い変化でもないと言いたげに部長が答える
ちょっと思い出した…という事は全部思い出したら、どれ程になるのだろうか
少し気になる
同時に試作版が気になり始める
部長は確か試作版の第五層からフィールドにいるモンスターに負け、そこから先は知らなかった筈
ならば、試作版とはどれだけえげつない代物だったのか、想像出来ないし今はしたくない
ただ…それほどである試作版をテスターはやっている
強いのは当然だ
記憶から頭に浮かぶのはあのトンファー男と両手剣男、そしてネリー
現在やってる事に差異があるとは言え、彼等も段違いに強い
約一名、人格のレベルから認めたくない奴がいるが…
いや、あの男について考えるのは止めよう
アレを思い出すと妙にイライラする
一度深く呼吸して、頭の中から排除する
部長の強さは、アレとは違う―今はそれで良い
そう考えながら、夜となったフィールドの中を、街に向けて進んでいったのだった