第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
ヨーコが答えを求め、静寂が流れる
ややあってエリーはいつもの調子で口を開いた
「苦手だから」
その言葉に全員が唖然とする
苦手…?エリーが?射撃を?
じゃあ今までの戦いは…とツッコミを入れたくなるような発言である
そんな私達の驚きを置いて、エリーは続ける
「私、この世界で出来る事は大体出来る。ここだけじゃない、大体のゲームはそうだった。でも射撃だけは時間がかかる。分かんないけど出来るまで時間がかかる」
それはエリーの持つ才の吐露
自分にある能力を言葉でさらけ出している
「多分合わせ辛いってのは知ってる。でも…そんな風に儘ならないから、これを選んだ。上手くいかないから、これ…好きだよ」
何という理屈だろうか
エリーは凄い力を持っている
それが多分、エリー自身の言う"大体出来る"なのだろう
ただ何故だろうか、射撃系統だけは出来るまで時間がかかる
それはエリー自身と本来合わない代物だから
でも、だからこそ、辛い事の後で仲良くなるように、その苦手さを顕すものを好いていく
ただ、元は苦手な代物だから、色々滅茶苦茶になってしまうだけ
「何よ…それ…」
今だ唖然としているヨーコは、漸く言葉を絞り出した
エリーは彼女の横を通り、狙撃地点へ歩き出す
「…それでアレが討てる?」
歯軋りと共に出たヨーコの言に、エリーは足を止め振り向いて答えた
「討てる。私、もう"掴んだ"し、皆が助けてくれるから」
今までよりも強さを持った目
そうしてもう一度歩き出したエリーに、今度はヨーコが振り替える
「なら…見届けさせてもらうわ」
「…ん。危なくないようにしといて」
そうして二人は歩き出し、ビルの中に消えた
(エリー…頑張って…)
私はエリーを信じる
必ずあのボスを倒すと
だからこそ、残った私達も全力を尽くさなくては…